(2)九谷焼の絵の具 九谷五彩

九谷焼の絵画的な絵付を可能にしたのは、いわゆる九谷五彩(緑・紫・黄・紺青・赤)の絵の具を使いこなす技法と呉須による効果的な線描があるからといわれます。九谷焼の絵の具は、落ち着いた中に明るさのある透明な(ガラス質の)絵の具で、通常の顔料とは異なります。古九谷のときから、絵の具には、焼かれたときに、発色が美しいこと、熔ける温度がほぼ同じであること、そして貫入が少なく剥離を起こさないことが求められてきました。そして、それらから感じる色は単純でなく、周囲の模様あるいは地色や呉須の黒と影響し合い、また色相互が補完し合うことによって変わって見えるのです。ですから、古九谷の青手のように、全体を塗り埋め、赤を用いることのない、多くて四彩、三彩そして二彩のものもあり、あるものは地文様の他に緑だけのものもあります。九谷焼の絵の具の色はとても直感的で印象的であるといえます。

≪古九谷の五彩の特徴≫
その色の組み合わせは原則として緑・紫・黄を主調とし、補色に紺青・赤を使用しています。赤や青(染付)が主で緑や黄や紫が補色として使われている肥前の色絵と根本的に異なります。

絵 の 具

特    徴

青味を帯びた澄んだ緑で、古くから緑といわずに青と呼んでいました
緑は古九谷の彩色、特に、塗埋手の中心となる色で、中国にも有田にもこのような緑はないのです

他窯の紫に比べて青味のある落ち着いた紫で、俗に藤紫といわれる。

比較的濃い落ち着いた黄で、時により橙また緑色を帯びて見える。緑との二彩でも弱さを感じさせないのです。

紺青

コバルトによる発色と考えられ、落ち着きのある、かすかに紫味のある紺青です。

紫黒色を帯びた強い赤 素地釉面の光沢を反映があるが赤の層は極めて薄く感じます。

 

≪各窯と陶画工の使った絵の具≫

各窯・陶画工

絵の具 と 彩色の特徴

春日山窯 赤・黄・緑・紫・花紺青 黄緑 金彩(呉須赤絵)
発色は黒ずんでいる
若杉窯 濃い緑・黄緑・黄・紫・(花)紺青・赤の塗埋手 俗にペンキ赤など多様
不透明な黄 薄緑と・薄黄 赤と染付による伊万里風の彩色もある
小野窯 線描の模様に赤・黄・紺青・緑・黄緑の彩色
民山窯 赤・紺青・紫・黄・緑・黄緑 赤の細描 わずかな黄と薄い緑と紫
吉田屋窯 やや暗い発色の紺青・紫・緑・黄 ほんの一部の金彩
宮本屋窯 赤絵細描 金彩 わずかに薄緑・紺青・茶がかった黄・紫
蓮代寺窯 褐色の素地に古九谷の緑・紫・黄 発色が悪い
松山窯 紫・緑・紺青(不透明な花紺青)・黄を主に黄緑・薄青緑
永楽和全 緑・黄・紫と金彩 染付と赤地金彩のコントラスト
粟生屋源右衛門 白化粧に水彩画の絵の具のように緑・黄緑・花紺青・黄・薄紫・茶
九谷庄三 色絵に赤地金彩(彩色金襴手) 黒地金彩もある

 

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