九谷焼でいう色絵は、普通、赤・緑・紫・群青・黄の五彩をうまく用いる五彩手を指し、特に、古九谷に始まるこの五彩を九谷五彩と呼びます。五彩手の絵付は図案を呉須で線描きしたところにこの五彩の絵の具を自在に活かしながら厚く盛り上げて塗る彩法です。いったん高温で焼きあげた白磁や染付の上に五彩で絵付し、再び錦窯に入れて焼きつけます。(画像は「色絵鶴かるた文平鉢」石川県立美術館所蔵)
一方で、こうした九谷五彩と趣の異なる粟生屋源右衛門の色絵があります。軟らかい陶胎に白化粧をほどかし、粟生屋特有の諸色(緑・黄緑・花紺青・黄・薄紫・茶など)で文様を絵付しています。このほかにも、春日山窯・若杉窯・小野窯・蓮代寺窯の諸窯で焼かれ、任田屋徳次・永楽和全の一部の作品にもこの様式を見ることができます。
九谷五彩が生まれたのは、17世紀中頃に、明末清初の時期に色絵祥瑞・交趾・天啓赤絵・南京赤絵といった多種多彩な五彩磁器が日本に盛んに輸入されたのに伴い技術も導入されたことに始まります。色絵祥瑞をもとに穏やかな独特な九谷祥瑞手を生み出し、中国の赤絵をもとに濃厚な色彩の色絵が制作され、古九谷に始まるこの様式に連綿と受け継がれてきました。
九谷五彩の特徴は、窓絵という構図をとり、その中に、狩野派や琳派の絵画、漆芸、染織、欄間彫刻の文様などに誘発されて完成された絵付がなされ、題材を絵画的・写実的に描いていることも特徴です。山水、花鳥、などは絵画的で絵画を見ているようであり、熟練された絵師の筆づかいを感じます。