明治九谷の作品解説 橋田与三郎 赤絵金彩大黒恵比寿図小皿 三様

大黒様と恵比寿様(七福神に含む)の図案が描かれた三枚の小皿にはそれぞれに相違点があります。大黒様と恵比寿様のイメージ、縁文様、成型、銘などから、それぞれが別の組揃えのうちの一枚であったと考えられ、興味が引かれます。

九谷焼では大黒様と恵比寿様といった図案はあまりに一般的であったので、橋田 与三郎のような名工は、図案や文様について自分のもつ知見、あるいは陶器商人の要望を取り入れて、一般的な図案を少し変えたと考えられます。また、制作時が変われば、素地の形や重さが異なることがあったといわれます。

サイズ 径 約11.7㎝ 高さ 約2.5㎝

一般的に、大黒様は農業の神様といわれるとおり、米俵の上で右肩に大袋を背負い、左手に小槌を持っているイメージであり、一方、恵比寿様は、釣り竿を右肩にかけ、鯛を左手に持っているのがそのイメージです。ところが、この三枚の小皿はいずれもそうしたイメージと少し異なります。

その相違点は、次の2画像も含めて、おおよそ次の通りです。この三枚とも、大黒様は俵のそばに座り、右手に何も持っていないところは共通しています。が、右手を挙げている大黒様(小皿①と②において)と膝の上に両手をのせている大黒様(小皿③において)が描かれています。恵比寿様につきものの釣り竿と鯛については小皿①には鯛の姿が見られません。

全体に手を入れていると感じられるのが、小皿③では、他に比べて米俵、大袋、鯛などの赤絵に引かれた金の線描が極細であり、恵比寿様と大黒様の表情が穏やかに描かれているように見えます。

三枚の小皿ともなます皿と呼ばれるもので、縁にいくほど上に反っています。ただ、①、②の小皿がやや急であるのに対し、③の小皿では少し緩やかです。

また、素地の厚さがそれぞれ異なっていて、重さにおいても、小皿①が132g、小皿②が119g、小皿③が96gと異なっています。

三枚の裏銘は「橋田画」と書入れています。ただ、小皿②、③は正しい「橋」の字ですが、小皿①は間違った字です。その理由はふめいです。

なお、初代橋田与三郎は、当初は「橋田画」を銘として書き入れ、ある時期から草書体の「与三郎」に変えました。その後、代々の橋田与三郎が草書体の「与三郎」を書き入れました。