制作者が得意としたと思われる深鉢からは素地作りから絵付までデザイン全てに色の豊かさが見えます。見込みの大きな窓の中に大黒様と恵比寿様と唐子の図、他の窓にも人物図と山水図、それらの窓の周りを埋め尽くす金襴地の文様、裏の側面には群れをなす蝶など、見ていて楽しくなる作品です。
サイズ;径約27㎝ 高さ約8㎝
囲碁が「手を使う琴・囲碁・書道・絵画の四つの芸」の一つであり、布袋、大黒、恵比寿の神様が囲碁を楽しんでいる絵図が伝わってきたことから、見込みには“大黒さまと恵比寿さま”が“たくさんの唐子”を相手に囲碁を楽しんでいる情景が描かれています。制作者はこの鉢が縁起物として使われると考えていたようです。
制作者が若い時に江沼郡山代の北出窯でロクロ師であったとの記録があるだけあって、どっしりとした鉢です。北出窯は明治初めには有名な素地窯となっていて、そこで修業した後、佐野赤絵を代表する初代 橋田与三郎の門弟となりましたが、この鉢を制作したとき、赤絵金彩や金襴手の時代も移り、色合いを変えて絵付したように見えます。
銘は「大日本/九谷焼/西野画」と書き入れられています。制作者は明治後半から大正にかけて活躍し、能美九谷陶磁器同業組合の内地商部の代議員に選出されたこともあり「九谷焼」ときちんと製品名を表示したと考えらます。