明治九谷の作品解説 西埜仁太郎 赤絵金彩布袋唐子図鉢

「布袋と唐子」の図案は、水墨画、狩野派の絵画、浮世絵などにも見られ、この作品では布袋が数人の唐子と遊んでいる情景が描かれています。円満な容貌の布袋さま”と“無邪気に遊ぶ唐子”とは組み合わせがよく、この深鉢は祝い事(子供の誕生)のために制作された縁起物であることがわかります。

サイズ 径 約30.3cm 高さ 約8.5cm

“布袋さま”は、唐時代に実在した僧といわれながらも、日本では七福神に加えられたのは“布袋さま”に誰もが感じる親しみやすさ、庶民性があったからと思います。

ここに描かれた布袋さまの表情にも、にこやかで、額が広く、太鼓腹を抱え、しかも大きな袋を持ち歩いていた粗衣の姿に親しみを感じられ、人々に慕われた布袋の生き方が子供の成長と重ね合わせたように見えます。

“唐子”の図案は唐時代に日本へ伝わり、“唐(の国)の子”と呼んで、いつしか、大勢の男の子供を描くことにとって、“多子多産”、“子孫繁栄”を願う願いを表現するようになりました。

この作品では、富貴繁栄、子宝をつかさどる神様として“布袋さま”と元気に遊ぶ数人の唐子とを組み合わせ、縁起の良いことを願って制作されたと思われます。

この鉢の見どころは歪みのないどっしりとした成型です。西野 仁太郎が素地で評判の高い北出窯でクロ師の経験を積みました。すでに、佐野村に斉田伊三郎(道開)が築いた本窯があったにもかかわらず、西野 仁太郎は、何らかの目的をもって、評判の高い北出窯でクロ師の経験を積みました。

銘は「九谷/西埜製」と書き入れられています。