明治九谷の作品解説 内海吉造 赤絵金彩牡丹に雀図皿

表の面一杯に、雀が牡丹の周りを飛び交う、いわいる“牡丹に雀”の図案が赤絵で描かれ、その背景が明治10年頃から流行った“石目打ち”(空白を細かい点の石目で埋める技法)で飾られています。縁は金襴手の細かな繋ぎ文で飾られています。

サイズ 径約18.8cm 高さ約3.3cm

牡丹の枝が上に向かって伸び、その枝が一度皿の外に出てから再び垂れ下がっているように描かれています。その牡丹の細い金の花脈(擦れて薄くなっていますが)の筆づかいもとても繊細です。

“牡丹に雀”の図案は、すでに、江戸時代に著名な画家らが作品に残していて、久隅 守景を父にもつ女性画家 清原 雪信や伊藤 若冲の作品にあり、明治になって、輸出用の工芸品のために狩野派の画家、図案家などによって編纂された図案集「温知図録」にも載せられ、美術工芸品の絵手本のように使われました。内海 吉蔵も明治11年(1878)の巴里(パリ)万博に出品する作品を制作した経験から、この作品もその図録からモチーフを得て制作されたと考えられます。

赤や金で塗られた表側の図案に比べ、裏側は、赤絵とか金襴手を離れて、細密に描くというより、見たものをそのままスケッチしたようです。

銘は「大日本九谷/陶山製之」と書き入れています。内海 吉造の号は「松齢堂陶山」です。ほかに、「内海吉造」を入れているものも多くあります。