明治九谷の作品解説 中野忠次 赤絵金彩七福神図皿

明治期の初めのころよく利用された割取には、七福神図、花鳥図、山水図が、そして裏には四君子図が描かれています。それらの図案は、庄三風の画風で、金彩は一部で、主体は早くから取り入れられた洋絵の具から造り出された様々な中間色で彩られ、見た目では金襴手のように見えます。

サイズ;幅約23.4cm 高さ約4.2cm

七福神図が赤、灰、金銀で華やかに彩られた中央の割取をはさんで、左の割取には写生されたような花鳥図が、そして、右の割取には水墨画のような山水図が描かれています。そしてそれらの周りは文様、金襴手、石目打ちで装飾されています。

とりわけ、花鳥図や山水図には、赤、ピンク、灰、茶、肌色、淡青などの中間色で彩られ、金、銀で加飾されています。こうして、花鳥、山水などは自然に近い色で描かれています。

この作品で驚かされることは、普通、表に描かれることの多い四君子図が裏一面に巡らされていることです。四君子図は工芸品のモチーフとしてよく用いられましたが、裏面を覆い尽くしているところがこの作品のもうひとつの見どころといえます。

蘭、竹、菊、梅の4種の草木が一つ一つ丁寧に中間色がバランス良く塗られ、それぞれの植物がもつ気品のある美しさを際立たせています。自然の美しさを上手く表現し、一方で、描き方は精緻を極め、全体が美しく仕上げられています。

銘は「大日本/九谷製/中埜画」と書き込まれ、銘の近くに刻印「九谷」が押されています。原産国の“日本”を入れた明治九谷の多くが輸出九谷でしたので、輸出のために制作されたことが考えられます。