明治九谷の作品解説 赤丸雪山 金襴手夏草花図皿

見込みに描かれた夏の終わりころの草花が繊細に描かれ、その周りを厚みのある金襴手で豪華に加飾した明治初期によく見られる金沢九谷独特の図案です。同じ構図で描かれたもう一枚の皿を見ると、そこには初夏の花が描かれていて、何枚かが組み合わせられた皿の一枚であったと思われます。

サイズ;幅 約21㎝ 高さ 約1.8㎝

描かれている花々は、牡丹、菊、われもこう、そしてリンドウです。中でも、花穂が長く高さのある優雅なわれもこうが風になびくように描かれています。この図案は明治九谷でも珍しく、欧米の注文主からの要望で取り入れられたと思われます。

縁に巡らされた金襴手のところを触れると、九谷焼独特の盛り絵の具と同じ手法で金が焼き付けられ盛り上がりを感じます。本当のところは長い年月大事に使われても金襴が擦り落ちなかったと考えられます。これを欧米の人々が“ブロケイド”と呼んだのは、その様相が金糸・銀糸で錦模様が刺繍のように織られたからといわれます。

裏銘は「雪山製」とだけ書き入れられています。「大日本」「九谷」陶器商人などの名を入れなかったのを見ると、まるで一幅の絵画として制作されたように思われてきます。