明治九谷の作品解説 赤丸雪山 金襴手百老図花瓶

百老図は、古くから、吉祥文として工芸品の意匠として選ばれ、明治九谷でも春名繁春、松雲堂、笹田友山、亀田山月、清水清閑、竹内安久などの多くの名工が花瓶、壺、大徳利、馬上盃などいろいろな器体に各人各様の百老図を絵付し、この制作者も花瓶一杯に大柄の仙人とも学者とも見える百老図が描かれています。

サイズ;口径約9㎝ 胴径(最大)約14㎝ 高さ約19.9㎝

この百老図にも制作者の特色が出ていて、いろいろな姿の老人の配置にもその向き方にも変化があって、見ていると楽しくなります。百老図は明治中期頃まで人気のあった図案であったといわれ、実際に百人が描かれていなくとも、老人らの姿は仙人の域に達した人たちのように描かれています。制作者はその人たちの顔の表情を一人一人変えています。その上、一頭の馬と一人の子供を連れている老人も描かれていて興味津々の百老図です。

高さ約20㎝くらいで大きな口をもつこの花瓶は、思ったほど重くなく(重量750g)、口元の均一な薄さに加え、下の方に向かってもその薄さを保ちながら、下にいくほど器体を細く成形されています。できるだけ老人たちを大きく描こうとしためか、器体の面を上にいく程広い面になるように素地作りを陶工に頼んだと思われます。

銘は「大日本九谷/雪山堂製之」と赤の字で書き込まれています。原産国や産地の名前を明確に書き入れていることから、他の名工の作品と同様に輸出品であったと考えられ、しかも一対の花瓶で飾られたと思われます。