明治九谷の作品解説 三ツ井為吉 色絵南画風山水図皿

伝統的な九谷五彩(緑・黄・紫・群青・赤)を使い、制作者自らが感じた、どんなものにもある「美」を南画風に表現したような作品で、野菜の持つ色形を優しく美しく表現しています。全体から受ける印象は、一面を五彩によって図案や文様で埋め尽くした倣古九谷の作品にせず、余白を多くとった一幅の静止画のように見えます。

サイズ;径 約17.5㎝ 高さ 約2.9㎝

野菜図を見込みの中央に配して、あとは余白とし、その余白を包むようにやや濃い黄を使って七宝文の繋ぎ文で縁文様を描いています。そうすることによって、制作者は、明治大正の九谷焼の図案の傾向(超絶技法)から離れて、自分が見たとおりに野菜を表現したと思います。それは、南画がそうであったように、制作者自身が感性で捉えた内面の美しさや深遠なる心情を表現したと想像します。

初代 三ツ井為吉は、素地はすべて手造りのものを使い、絵付もすべて自身による手描きであったといわれます。この八角形の素地を、見込みから縁に向かってゆっくり引き延ばしたような柔らかさが感じられます。

銘は二重角に「九谷/為吉」と書き入れられ、共箱に「為吉」と書き、押印があります。この銘の形式は初代の作品に多く見られ、二代はこの形式を受け継ぎましたが、三代は二重角に「為」のみを書き入れたものに変えています。