古九谷五彩手のいくつかの作品からモチーフを得て制作したと思われる作品です。三ツ井為吉が初代 徳田八十吉から修得した五彩手(緑・黄・紫・群青・赤を使って絵付した様式)を基礎にして、自らも鮮やかな絵の具を創り出することができました。この作品も、そうした技巧を使い、加えて古九谷からモチーフの多くを得て、まるで古九谷五彩手の大平鉢であると見間違えるほど見事な大皿に仕上げたと思います。
サイズ 径 約27cm 高さ 約3.8~3.5cm(歪みのため)
石畳文、その上に重ねた木瓜の花の文様、そして唐人図などはいずれも古九谷五彩手の作品から抜け出てきたような文様であり図案です。特徴づけるのは唐人図であり、それは、古九谷のモチーフとなった「五言唐詩画譜」に載った図案を連想させる図案であり、二人の唐人が花をつけた二本の木の下で語り合っている情景が描かれ、周りの文様と合わせて、正に、古九谷のような作品です。
この大皿は口縁に向かって反るように広がり、さらに、口縁部で幅2cmほどの幅でさらに反っています。この形は古九谷の大平鉢の二段鉢によく似た成型の仕方です。
銘は二重角に「九谷/為吉」と書き入れられ、共箱に「古九谷写意/額皿」と「為吉」と書き入れられています。おそらく、この作品に託そうとする自身の古九谷への思慕を表したかったため、為吉は銘の形式を古九谷の銘である二重角「福」に真似たと考えられます。
なお、この銘の形式は初代の作品に見られ、二代はそれに倣いましたが、三代に至っては二重角に「為」のみを書き入れたものに変わっています。