一対の酒杯の内側には小田清山による漢詩文の細字が書かれ、外側には牡丹の大輪と藤の花が色絵で描かれています。
牡丹の大輪は彩友によって花びらに立体感も淡いピンクのグラデーションもあって、素地のぼかした色合いの中で浮き上がって見えます。清山は佐野赤絵の樋口弥三郎に陶画を学んでいますが、この色絵は金沢九谷の陶画工が描いたと見られます。
この漢詩文は『唐詩選』の中にある張若虚が詠んだ「春江花月夜」というもので、春の川辺に咲く花、月に照らされた夜景を詠んだものです。高橋北山の小さ目の馬上杯の内側にもこの漢詩文が書かれ、二人の接点をうかがわせます。
銘は高台内に「九谷」とだけ書き入れられ、内側の漢詩文の最終行に「清山」と書かれています。字体から銘「九谷」も清山が書いたようです。