広い白素地を水面と空に見立て、水面には人を乗せた小船が、そして空には咲く木花が張り出したところが九谷五彩で描かれた人物山水図となっています。こうした広い白素地を取り入れた構図は古九谷に倣ったと思われ、五彩といい構図といい、八十吉が古九谷を欽慕していたことがうかがわれる作品です。
サイズ;径 約18.6cm 高さ 約2cm
八十吉は、初めて見て目に焼き付いた古九谷の五彩の復元に生涯をかけたといっても言い過ぎではないほど、五彩の研究に打ち込みました。その結果、見事に再現されました。珍しく赤を多用していますが、この赤いさざ波によって全体が引き立てられています。
裏面には、高台の中に「九谷/八十吉」の銘が緑彩され、その縁に宝尽くし文が並べられています。古九谷の大鉢に倣った構図です。
高台内の銘「九谷/八十吉」が緑彩され、共箱の裏に落款「鬼仏」が押されています。それぞれには経緯があって、銘については初代が角福を書き入れた自作の皿が本物として取り上げられたのを見て慌て、それをきっかけにこの銘に変えたといわれ、また落款については二代、三代八十吉と分けるために自分の号を落款として押したといわれます。