明治九谷の作品解説 相川雪花 色絵竹に蜻蛉図徳利

徳利はすらりとした形をしていて、その素地の白さが際立ちます。一幅の軸に見立てたように、中央にすっと伸びた一本の竹が簡潔な筆で描かれ、その竹は、緑の植木に囲まれ、先端には赤いとんぼが羽を休めています。日本画のようです。

サイズ;口径 約3㎝ 胴径 約7.4㎝ 高さ(蓋付)約15.5㎝

とんぼは昔から絵画や家紋になった昆虫で、物にとまった時に翅を水平に開く赤とんぼは“赤衣使者”の名も付けられ、また勝虫ともいわれて、縁起を担いだ武将から好まれました。そんな時代からかなり過ぎた明治後期に絵付されたこの徳利からは、赤とんぼがひろい空間の中で飛んで、やさしい緑の植木に抱きかかえられて休んでいるように、図案からは静かさが伝わってきます。

やさしい色をした緑で植木が描かれています。ある著名な九谷焼作家から「この葉は和絵の具で絵付されているんです」と教えられると、緑の葉はさらに透明感が増して見えてきます。洋絵の具が全盛であった時代に、どこか色合いにもこだわった制作者の心情が伝わってきます。

銘は「九谷/雪花」と書き入れられています。トンボの赤と同じ色で書き込んでいるのが珍しいと思います。