小さな杯の外側には縁と脚周りを金襴手の文様で飾り、そのわずかなすき間に人物と風景が描かれています。内側には九谷細字の先駆けといわれる、「北山書」の細字が書き込まれています。
サイズ;口径約4.2㎝ 高さ約5.9㎝
細かな漢字がはっきりと読みとれます。この漢詩文は『唐詩選』に採録された、張若虚の「春江花月夜」で、春の川辺に花が咲き、明月の照りわたる夜景を詠んだものといわれます。
杯の側面に男女と風景の図が縮図のように絵付されています。その図は高橋北山が内側の漢詩文から連想して描いたと考えられます。
銘は「九谷/鏑木製」と、内側の漢詩文の末尾に「北山書」と書き込まれています。絵付も書も高橋北山によるとみられます。